印鑑に「アタリ」がない理由(高田馬場3丁目店)

アタリとは、印鑑の側面に付けられた目印のことで、通常は突起状の物がつけられていたり、くぼみが付けられていたりします。
このアタリがついていることで、印面の上下がわかるようになっており、捺印の時に印面が横になったり斜めになったりするのを防ぐことができます。

また、手触りだけで印鑑の上下が分かるようになります。
わざわざ盤面を確認する手間が省けるので、印鑑を多用する人にはありがたい工夫といえます。

この「アタリ」があることで少々暗いところでも印面の上下がわかり、書類に正しい向きで捺印できます。
また急いでいるときにもいちいち確認する時間が省けて効率的です。

それなのに・・・、
「せっかく高額のお金をかけて作成した実印や銀行印に「あたり」がついていない!どういうことだ!」
と感じたことはないでしょうか。

 

印鑑は自分の持ち物の中で、最も大切なものであるといえます。

実印など印鑑はご本人に代わってその人の権利を主張したり守るという大きな役割があります。押印することで自分が了承したことになるので、大袈裟にいうと自分の代わりともいえるです。

すなわちもう一人の自分なのです。
そのような印鑑に「あたり」をつけることはその大切な自分の体を削る・傷つける・自分の価値を下げることと考えられています。

したがって高価な印鑑には「あたり」が付いていないのです

 

 

 

もう1つの理由は、あえて印鑑の上下を確認する時間を確保するためです。
人生に関わる大事な契約をするときは、緊張したり舞い上がったりして冷静な思考ができないケースがあります。
そのような場合でも、印鑑の上下を確かめるために一呼吸おくことで、冷静になれる場合があるのです。

また書類の間違いを防止するという役割もあります。
多くの人は書類を記入して、押印を最後にします。
その際、書類に間違いがないかを見直すことが多いでしょう。
印鑑の上下を確認する必要があると、この見直しの時間をしっかり確保する傾向があるのです。
逆に上下を確認しなくて良い場合は、スムーズに押してしまうため、確認が不十分になりがちなのです。
小さいことのように感じるかもしれませんが、書類を見直すことにより、取り返しのつかない大きなミスを防げる可能性もあります。

格安の既製認印をには「あたり」がついています。
俗にいう三文判(さんもんばん)とよばれているものです。
「三文判でもなんでもいいからここにハンコを押して」
というときにあまりしっかりと内容の吟味もしないで気軽に押しちゃうから三文の価値しかないということから付いたそうです。
二束三文(にそくさんもん)という言葉がありますがこれも同じですね。
江戸初期の「金剛草履(こんごうぞうり)」の値段が、二束(ふたたば)、すなわち二足で三文の値段で売られていたことに由来しています。